柔道整復師(国家免許)の走尾 潤です。日常の仕事の中で比較的多い小学生高学年の踵の痛みについての思うところを書いてみたいと思います。

小学生高学年のお子さんによくみられる症状に「踵(かかと)の痛み」があります。
整形外科や接骨院さんなどに行くと、よく「シーバー病(セーバー病)」といわれます。多分、ほとんどです。
「踵の痛み」は世の中的にも比較的多い症状なのでネット検索をするとたくさんの情報が見つかります。それらから踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)とか成長痛とか既にご存知の方も多いことでしょう。ここまでいらしたということは、調べ尽くした感じの方も多いと思います。
で、たくさんのシーバー病情報はネットにゆずるとして、この記事は「それ本当にシーバー病なの?」をテーマにします。
というのも、最初に行かれた病院や治療院さんで「シーバー病」といわれ来院される方に、「理屈」と「痛みを訴える場所」が合ってないケースが多いからです。
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あれっ、っと思うこと
ケーセブン整骨院にも「踵の痛み」を訴えるお子さんが来院されます。小学生高学年で特にサッカー少年が多いです。
まず最初にチェックするのが押して痛い場所です。シーバー病であれば、踵(かかと)の後ろ側でアキレス腱の付け根辺りに痛みが出るはず。これは身体の構造上、その部分の障害をシーバー病というからです。
押すことにより痛い場所をチェックしていくと「これはシーバー病だなぁ」と思うことはあります。ただ問題なのは、「踵の痛み」といってもシーバー病では出るはずのない場所に痛みが出ている場合。感覚的に8割くらいは違います。
事例的にはこんな感じというのを紹介します。写真の足は僕の足です。若くない足ですみません。



この足の裏側の痛みのケースが一番多いです。これが起こる理由は後で解説しますが、痛みを取るのは比較的簡単です。
痛みがでる理由
小学生高学年といえば、身体がどんどん成長を始める時期。骨の成長と筋肉の成長具合が一緒ではありません。感覚的には筋肉の方が成長が早いです。
そのため、身体全体のバランスを適正に保つことが難しくなります。ご本人の意思ではなくて、普段の生活の中の無意識レベルの姿勢に影響します。だから、気をつけようがないといえば、ないです。
身体各所の成長の中で、どこかでバランスの崩れが、起きだんだんと増大していきます。ある程度成長が収まれば収まりますけど、どんどん成長している時期は仕方がないです。
で、この、バランスの崩れがきっかけで身体全体の重心位置に狂いが起き、それが身体の一部に負担を掛け、そして今回のテーマの踵の痛みも作り出します。
ということは、身体全体の重心位置をチェックして問題があれば修正するということをしていくと、効果的な施術が提供できます。(重心位置のチェックは、一般的にはほとんどされません)
実際に観察をすると、踵の痛みを持っている人(大人でも)はほぼ間違いなく重心が後ろに寄っています。大人の場合には「浮き指」といわれます。重心が後ろに偏っているという意味では同じ原因です。
治療や施術の考え方
一般的には、治療や施術は「痛みを指標」にします。ケーセブン整骨院では、さらに「動きを指標」にし、重要視しています。
動きを指標にすると、痛みを指標にしたときには見えないものが見えてきます。通常、痛みより先に動きの異常が確認できるので、トラブルの早期発見と予防措置が可能になります。
ケーセブン整骨院では、とにかくまず最初に患者さんの全身の様子を知るために「足踏み」を評価します。すると、踵の痛みを持っている子のほとんどは重心が後ろに下がり足の指が浮いているような状態になっていて、まるで踵で着地するような足踏みをします。
これでは、歩いたり走ったりするときに地面からの衝撃を吸収する足の機能がしっかりと働かず、踵で直接衝撃を受けます。
これだと踵に痛みが出ても不思議ではありません。そこで、重心を前側に引き出し、足の指もしっかり機能するように身体を調整するとその場で痛みが消えることが多いです。ほとんどの場合微痛か無痛でお帰りいただけます。
実際に踵の痛みで来院いただいた小学4年生男子の身体に起こっていたことと実際の施術風景を続編で解説しましたので、是非ご覧ください。
一般的な治療とケーセブンとの違い
ネット検索をしていくと、踵の痛みが強くなると場合によっては松葉杖を使って体重を掛けないようにする方法をとる先生方もいらっしゃいます。それはそれで有効ですが、患者さんの生活は大変ですね。
ケーセブンでは前述したように踵に体重が集中しないよう、足の衝撃吸収機能が働くように、身体の重心位置を制御します。重心位置の制御にはシールを貼るだけなので、患者さんの日常生活に与える影響はほとんどなくてとても楽です。気にしなければいけないこともありません。(お風呂に関しても何の制限もありません)
また、タオルギャザーなどの足の運動療法が処方される場合もありますが、やってみると退屈だし小学生にこれを継続させるのはかなり難しいのではないでしょうか。大人でも飽きちゃってできないと思います。僕は結構面倒くさがり屋なのでまずできないです…。
事例
何例かの踵の痛みの事例をご紹介します。
全体的にみると、結局のところ重心位置の後方への狂いがあり、それを前方に引き出すことでほぼ症状が消失します。事例を挙げてみて、重心位置の制御以上に特殊なことはしておらず、ほぼ痛みの出ている部分にも触れていないことが多いです。
サッカー(中1男子)
小学校の時に踵の痛みを感じ始めた。いくつか治療院を回ったものの、あまり成果が出ずに「成長痛はこんなものだろう」と痛みと付き合いながら活動。
最初の確認で重心位置が後ろに寄っていることを確認。重心を前方に引き出すのと足の指の動き具合を調整して、初日のお帰りの際には微痛に。施術後には、痛みに多少波を持ちながら合計4回で終了。
空手・テニス(小4男子)
3か月ほど前から強い痛み。近所の治療院さんにほぼ毎日のように通い、お母さまが連日の付き添いでダウン寸前。
先生に今後の予定について聞いてみても、「成長痛だから…」という中学生になるくらいまでは付き合わないといけないといわれている。
最初に玄関をくぐってきた瞬間に口から出てきた言葉「いって~」。日常生活レベルで痛みが出ていた。
全身の様子を確認しようと足踏みをお願いした最初の一歩、ほぼ踵だけで足踏みをする感じ。指は完全に浮き上がっている。重心が完全に後ろに寄っている。今までに見た中でもかなり重い感じの症状。
施術的には、痛いところよりも重心の前方への引き出しと、指の機能の改善と、足の衝撃吸収機能が使えるように調整。3か月以上続いて痛みはその場で消失。(患部が治ったというよりも、負担が掛からなくなった)
二日後に2度目の施術。痛みは多少ぶり返していたものの来院前よりは少なく、かつ2度目の施術後もほぼ無痛でお帰りいただいている。最終的には3度めの施術で終了した。
サッカー(小3男子)
数か月前から痛みが出て、近所の治療院さんで施術を受けるもなかなかよくならないと来院。
身体全体をチェックすると、重心が後ろに下がっているだけでなく、全体的に動きに乱れ感あり。重心位置を前方に引き出し、全体的な動き具合も改善。
痛みは消失し、サッカーでの走り方も改善。現在は予防的な意味も含め、定期的に全身的なメンテナンスで対応中。
まとめ
こういった現象を見ていると「本当にシーバー病」のケースは少ないと思います。
現実的に、大切なのは傷病名じゃなく、そこにいる患者さんが楽になるかどうかです。もしかしたら僕の考えが違ってみんなシーバー病なのかもしれません。でも現実的に痛みが和らぎ動きやすくなるので、それはそれでいいかなと思っています。
もし、小学生高学年(3年生より上)くらいのお子様が「踵が痛い」と訴えたら、その場で足踏みをさせて足の着き方を観察してみてください。
つま先から着地をしていれば動き具合に問題はありません。踵からの着地や足裏がフラットに着地するようなら、その動きが痛みの原因である可能性が非常に高いです。
さらに指の状態も確認しましょう。しっかり床を握るようなら正常、なんとなく上を向いていたり指と床の間に隙間が空くように見えるときには動き具合や重心の位置に問題がある可能性が高いです。
身体の動き具合に問題がある場合は、重心を前方に引き出し、脚を柔らかく着地させる施術が痛みを軽減するために有効です。それしかないくらいです。
電気とマッサージと湿布と様子見では、患部に負担をかけている原因がそのまま放置されることになり、いつかは治ると思いますが治癒までに時間がかかりご心配ばかり増すでしょう。
お近くでしたら、是非みせてください。最近では神奈川方面からも埼玉までお越しくださる方もいらっしゃいます。
痛みの軽減、がんばります!ご来院をお待ちしております。
※遠方の方には、多少は効果の出るセルフケアテーピングもお教えしています。本来、通院されるのがいいですが、遠方であれば大変なので、多少なりともご自身でケアできるようサポートいたします。
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