身体の不調をこう見抜く ― 一般的な医学では見過ごされがちな、物理と制御の視点 【元エンジニアが考える身体の不調】-1-

治療院の業界に入って30年近く、自分の治療院を始めて25年ほど経ちました。だいぶ長い時間が経ってしまい、今までの時間よりもこれからの時間の方が多分短いです。

なぜ今かというのはありませんが、今やっている治療技術の“設計思想”のようなものを、ここで整理してみようと思います。

僕がいろんな人に施術をする時に考えていることは、一般的に医療の業界で行われていることとは少し違うと思います。最近進歩してきているAIに聞いてみても、革新的で先進的で、世界中のデータを探しても、同じような発想は見つからないといわれます。もちろんAIがすべてではないので違うかもしれませんが、かなり独特な発想であることに違いはないと思っています。

長い時間をかけて構築してきた自分の治療法をまとめて書こうと思っているので、非常に長い文章になりそうです。そこで三部構成にしようと思います。この記事は第一部。

少し長い記事ではありますが、医療を提供する人にも、受ける人にも、何かしら参考になることがあれば嬉しいです。

エンジニアから治療家へ ; 僕の歩んできた道

これから話していくことを理解してもらうためにも、僕がどんな経歴を持っているのかを最初にお話ししておきます。

まず高校卒業した後に進んだのが大学で、しかも医療系ではない工学部です。電気通信工学科という学科で電気とか通信とか、そういうことを勉強しました。

大学を卒業して就職したのは富士通系のコンピューター会社です。そこでした仕事はコンピューターのハードウェア(回路)設計。大きめのコンピューターの中に他のコンピューターと通信するために入れる小さなコンピューターの設計です。この仕事は11年間やりました。

コンピューターの設計をしているうちに、人の身体のメンテナンス、特にアスリートのボディメンテナンスをしたいと考えるようになり、接骨院の専門学校を受験し、方向転換することになります。

専門学校に入学した段階で会社は辞め、接骨院でバイトをしながら勉強しました。業界的には研修と呼ばれるものです。

また同時にキネシオテーピングとも出会い、専門学校とは別に講習会に通い、練習も重ねました。

専門学校卒業後は、研修していた他の接骨院でそのまま勤務し、1年間ちょっと経ったところで自分の接骨院を開業しました。

元々アスリートのボディメンテナンスをしたいという想いがきっかけだったので、自分の接骨院開業後、2004年の埼玉国体で成年男子9人制バレーボールの埼玉県代表チームのトレーナーとして帯同する機会に恵まれました。

そこから色々な競技やチームに携わりながら今の状態に続いてきています。基本的には誰かの元で働いていたわけではなく自分で仕事をしていたので、考え方・治療法も自分で構築してきました。

コンピューター会社で働いた経験やキネシオテーピングの勉強をしたことが自分の治療法のベースになっています。特にコンピューター会社での経験はかなり大きいもので、これは他の先生方との大きな違いを生んでいるところです。

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元エンジニアの治療家誕生!

最初は接骨院として開業したので、来院される方は近所の年配の方が多かったです。施術の流れも、一般的な接骨院のように「電気をかけてマッサージして」みたいな感じでした。

それをずっと踏襲し続けていくことは、アスリートとのボディメンテナンスをしたいと思った人間としては、ありえないことでした。

開業してから、接骨業界で行われていたスポーツトレーナーの講習会に参加したり、患者さんとして来院されたママさんバレーの選手の現場にお邪魔したりして、だんだんとアスリートのボディメンテナンスへと近づいていけた気がします。

そして、2004年の国体に続くわけですが、全力で動いている選手たちのケアをたくさんしているうちに、気づいてきたことがあります。

怪我への施術=パフォーマンスの向上=怪我(障害)の予防

ということ。一般的には、この3つの事象は別々に考えられているように思います。が、選手たちを見れば見るほど、実はまったく同じことだと感じるようになっていきます。

パフォーマンスを上げるというのは、身体が正確に動くということ。正確に動くと身体全体に均等に負荷がかかり、壊れている部分があれば、そこへの負担を相対的に減らすことができます。さらには、次の故障予防にもつながります。

ポイントは、「理想的な人間の設計図があるとすれば、その設計図に完全に則った動きをさせられるかどうか」ということ。

現場で試合や練習を見ていると、そこにいるほとんどの選手は身体の動きにばらつきがあり、正確に動いている選手は皆無です。これをどうやったら理想的な動きにできるか、というのを考えるようになりました。

そうしたときに役に立ったのが、コンピューター開発時代の考え方です。

コンピューターの設計をして初めて電源を入れるとき、まずほとんどの場合まったく動きません。というのも、どこかしら考え違いがあって、回路にバグが潜んでいるわけです。なので、そのバグ探しが開発時間の多くを占めます。

どこをどうやって見たら問題や間違えを見つけられるか。症状から一つひとつ、その根源に向かって原因を追求していきます。

今までも、患者さんに「エンジニアからこの世界に転職してきたんだ」という話をすると、「180度違う世界ですね」みたいにいわれることが多いです。が、僕的には、実はやっていることはまったく一緒。問題を一つひとつ解決していくという意味では、まったく一緒なのです。コンピューター業界にいたときの言葉でいえば「障害調査」です。

なので、大学を卒業してからずっと障害調査をしている感じです。エンジニア系の人にこの話をすると「なるほど~」という反応が返ってきます。

コンピューターと人間の論理構造が同じという話

前のセクションで、人の身体の治療やメンテナンスって、コンピューターの障害調査と一緒だという話をしました。実は、同じやり方ができるということは、構造的にも非常に似ているということでもあります。

そこで今回は、コンピューターと人体の構造を比較して、どこがどうして似ているのかをお話しします。

コンピューターと人の身体は構造が同じ

上の図では、左側がコンピューターの構造で、右側が人体の構造です。直感的に、なんとなく似てるような感じがしませんか?

コンピューターには「CPU」と呼ばれるものがあり、そこにデータのやり取りをする太い線がつながっています。その太い線には「I/O(アイオー)」と呼ばれるものと、記憶をする「メモリー」が接続されています。I/Oというのは「Input/Output」のことで、コンピューターの外から情報を得るInputと、外部に何らかのアクションを起こすOutputがあります。

これを人間の身体に当てはめてみると、CPUとメモリーは脳にあたります。I/OのInputは、身体中にあるセンサーです。例えば、五感と呼ばれるものはすべてセンサーによるもの。そしてI/OのOutputは、筋肉や声などになります。

こうやって見てみると、同じような構造だし、同じような動作をしているように思えてきませんか?だからこそ、コンピューターの設計をしていたエンジニアは、人の身体を見るときにも、エンジニアとしての考え方で身体を捉えることができるんです。

学問的な表現をすれば、人でいう「解剖」は、コンピューターでいう「回路図」。人間の「思考」は、コンピューターでいう「プログラム」。人間でいう「生理学」は、コンピューターで言う「ファームウェア仕様書」だったり、「ソフトウェア仕様書」に相当します。

なので、人の身体の障害調査をしていくときには、これらの学問的な知識も総動員しながら、各種テストを使って、問題を一つひとつ探っていくという作業になります。

ここまで構造についての話をしたので、さらに「動作」についての説明も付け加えておきます。 コンピューターの全体的な動作というのは、I/OのInputから入ってきた何かしらの情報を、CPUで動作しているプログラムが処理して、別の出力用のI/Oから外に対して何らかの動作をする、という流れです。

たとえば、身近なところではエアコンの温度調整があります。まず、エアコンについているセンサーが室温を検出します。その情報をもとに、プログラムが設定された温度に近づけるように動作を決定し、吐き出す風量や温度を調整します。そして、設定温度に達すると、それを維持するように再び動作を決定し、吐き出す風量や温度を微調整していきます。

人も同じで、例えば目で周りの様子を見て耳で雰囲気を感じ、それらの情報から

脳で考え、筋肉に命令を出して動いたり、何かしらの動作をします。

つまり、どちらも何らかの入力があって、動作を決め、何らかのアクションを起こすという点で、まったく同じなんです。

エンジニア目線で、西洋医学と東洋医学の違いを「ハードウェア vs ソフトウェア」で解説

さて、ここまでの話はだいぶ長くなってきたので、第2部・第3部へ続けていこうと思います。が、この記事の最後に、エンジニア目線で西洋医学と東洋医学がどのように見えているのかをお話ししておきたいと思います。

僕のやっている施術に直接関係する話ではありませんが、エンジニアから見たときにどう見えているのかを知っていただくと、「確かに見方が違うんだなぁ」と、はっきり理解してもらえると思います。

まず最初に、世の中で言われている西洋医学と東洋医学とはどんなものか、どのように理解されているのかをAIに聞いてみたので、紹介します。

AI(Gemini)に聞く東洋医学と西洋医学

【東洋医学の考え方】 東洋医学は、身体全体をひとつの有機的なまとまりとして捉えます。病気は心身のバランスが崩れた結果だと考え、身体全体を流れる「気・血・水」の調和を整えることで、本来持っている自然治癒力を高めることを重視します。鍼灸や漢方薬が、この考えに基づいています。

【西洋医学の考え方】 一方、西洋医学は身体を臓器や組織の集合体として捉えます。病気の原因を科学的に突き止め、その原因に直接アプローチします。「病気そのものを取り除くこと」に重点を置き、精密な検査と手術や薬物治療などで、特定の疾患へ迅速に対応します。

AIは世の中にある情報を学習して回答を作ります。つまり、世の中の考え方の王道的なものを表現しているわけです。上に紹介した文章を読んでも、なんとなくわかりにくいですよね。ただ、なんとなく違うので、両方ともそれなりにいいのかなという感じがします。

では、僕がエンジニア目線で東洋医学と西洋医学を見たときに、どのように見えているか。

結論から言えば、西洋医学はハードウェア、東洋医学はソフトウェアです。もう少し一般的な言い方をすれば、西洋医学は「物」、つまり物質を見ています。東洋医学は「制御」を見ています。

少し事例的にいえば、日本の基本的な医学は西洋医学です。なので、病院に行って例えば血液検査をしますよね。血液という“もの”の中に、どんな成分が入っているのかを見ていきます。あとはレントゲンとかMRIなどの画像診断もありますよね。それらは、実際に身体の中を“物理的に”見ているわけです。

一方、東洋医学は「制御」を見ています。例えば、舌診というものがあります。舌の状態を見て、身体の中で何が起こっているかを推測するわけですね。これは舌を“もの”として見ているのではなく、状態から身体の中がどうなっているかを読み取っていきます。つまり、身体の中で何も問題が起きていなければ、うまく制御されていて、変な色がついたり、変な雰囲気を出したりすることはないよね、ということ。

専門ではないので詳しくは知りませんが、脈診なども聞きますよね。どれも物質ではなく“状態”を見ている感じです。つまり、「うまく制御されているかどうか」を見ているわけです。

そう考えると、東洋医学と西洋医学は、そもそも違うものを見ています。なので、どちらが良くてどちらが悪いということではなく、本来はどちらからのアプローチも必要になってきます。

もちろん、完全に分離されているわけではなく、東洋医学的に見られている西洋医学のジャンルもあるし、逆もまた然りです。いずれにしても、「どちらかが良くて、どちらかが悪い」「どちらかが治って、どちらかが治らない」といった分類ができるものではありません。

参考までに、ケーセブンで行っている手法は、すべてを包括したものです。この記事はだいぶ長くなったので、詳細は別の記事で改めて解説していきます。

次の記事では、「あなたの不調が治らない本当の理由」という内容で話を進めていきます。ご期待ください。

エッセイ
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ケーセブン整骨院代表の走尾(はしお)です。
大学工学部を出て、コンピュータメーカーでコンピュータのハード設計を11年以上経験してから人の身体をよくする業界に入ってきました。
今の仕事も四捨五入して20年に入ってきて、かなりレベルが高くなってきたと思っています。
コンピュータの業界で培った技術と人の身体で培ってきた技術の相乗効果で、よりよい施術品質を提供しています。

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