リモートワークで腰痛になったと訴える20代のOLさんへの施術パート2です。
まずは、パート1を読んでない方はこちらから。
前回、リモートワークにより腰痛を訴えた20代のOLさんに対する一般的な施術を行い、一旦は痛みが和らぎました。しかし、数日後、まだ痛みが残るということで、再来院されます。
再度、腰痛への施術を進行する中で、予想外の原因が浮かび上がってきました。
今回は予想外の原因の気づきと対策、その後についてお伝えしていきます。
再来院と症状
数日後の再来院と残存する痛み
一回目の施術後、痛みが残ったため三日後に再来院されました。初回のお帰りの時にはだいぶいい感じだったので、そのまま終了になると思っていましたが、そう簡単にはいきませんでした。
前回施術との違いを感じる
初回でだいぶ痛みが減り、少し時間がたったところで再び痛くなるのはよくあることだし、体験している方も多いと思います。
行ったときにはいいんだけどね…
ってやつです。
いろいろとテストを進めていくと、その結果より、初回よりはかなり良くなっていることがわかります。
施術後、患者さんがまだ痛みを感じているという訴えがある場合、たいていは施術で表面的な痛みを和らげたが、まだ原因の追求がしきれていないです。
いずれにせよ、淡々と各種テストと修正の施術を進めていきます。
施術中の気づき
ケーセブンでの施術は、とにかくテスト(検査)をします。目の前の患者さんの身体に対する情報を少しでも多く採りたい。情報が多ければ多いほど、質の高い施術が提供できます。痛い場所だけ聞くだけとか、ありえない…。
そのため、施術をしながら割とたくさんの話をします。駄話ではなくて、身体の話ですね。
で、話をしながら何となく違和感を感じました。それは、患者さんの座っているときの姿勢です。やけに背筋を伸ばしている感じ。なので、座っているだけなのに、上半身に力み感を感じます。
「力み」って結構ヤバイです。力みを持つ多くの人の身体のトラブルは、ある意味「自爆」です。「力み」が問題を引き起こす多くの症例では、その原因は患者自身ではなく、彼らの周囲の環境にしばしば存在します。そのため、この力みを取り除くための施術は一層難しくなります。
無理な姿勢への違和感
座っていても胸を張る。いい姿勢で痛い、しないといけないという意思を感じます。もちろん、患者の表面的な意思ではなく、そう思い込んじゃっているような無意識に近い意識もあったりします。
今回のケースは、まさにそういう感じで、ただ座って話をしているだけなのに、背中はかなり後ろに反っていました。
「どうしてそんなに反っているんですか?」という質問にも、ご本人自体が反っていることに気づいていなかったので、「何を聞かれているんだろう???」な顔をされていました。
本人が気づいていないのに、周りのだれが見てもあえて作っている姿勢、やっぱおかしいですよね。
母親への聞き取りと仮説の立案
たまたまお母さまが同席されていたので、家でもこんな感じで座っているのかを質問してみました。答えは、Yes。
更にですが、お母さまがピアノを弾く方で背筋を伸ばすのが常識というか必須な感じだそうで、それを今回の患者さんであるお嬢さんに小さいころから口酸っぱく「背筋を伸ばせ」的にいっていたそうです。
それがお嬢様に習慣づいけてしまい、ただ座っているだけでもそういう姿勢を取るようなってしまっていたようです。
「背筋を伸ばす」とか、「姿勢を良くする」というのは、ものすごく主観的なことで、それが本当に身体に良いことかどうかはしっかりと検討されていないことが多いです。
この無意識ながら作りだしてしまっている姿勢が腰に負担を掛け、今回の腰痛につながっている、それが僕の仮説です。だとしたら、いくら治療をしてもまたすぐに痛みが出てきますよね。
仮説の検証とその過程
これが原因じゃないかな、と仮説が立ったのでそれを検証していきます。
バランスボールを使った姿勢の確認
今回使った評価方法は、「バランスボールに座ってもらう」というもの。バランスボールに座るのは不安定なことなので、腰を含め身体のいろいろな部分が安定を作るように働きます。バランスボールに座ると、身体は自動的にバランスを取るために最も楽な姿勢を探ります。
そのため、前述のように背中を反らせるようないわゆるいい姿勢で座ることは難しいです。特に訓練をしていない限り、身体が一番安定する姿勢を作ります。
痛みの変化からの仮説の評価
そして、実際にバランスボールに座ってもらったところ、痛みが全然でなくなりました。つまりは、自分で作った姿勢が痛みの原因になっていたということと思ってよさそうです。
原因と対策
では、今回の腰痛の原因と対策をまとめてみたいと思います。
小さい頃からの指導が腰痛の原因
腰痛の大元になった原因は、お母さまの子供が小さいときからの「背筋を伸ばせ」という指導だということ。そのため、お母さまには、姿勢についてあまり口にしないようにお願いをしました。
習慣の解除と施術による改善
さらに、ご本人の身体的には、身体を安定させるための体幹系の働きが若干落ちていたので、それを補正できるようにテーピングの方法を伝えさせていただきました。
そういうと、「体幹が弱いなら筋トレさせろよ!」という声も聞こえてきそうですが、それはちょっとピントがずれています。筋力がないというよりもちゃんと働いていない状態だったので、キネシオテーピングでちゃんと働かせることを選択し、テーピング方法をお伝えしました。
治療について考える
今回の腰痛に対応するには、単に身体のことを知っているとか、施術の技術があるだけでは不充分でした。一般的に、身体の評価って可動域とか出力される力の大きさがメインになります。
身体の動き具合まではみられないことが多いので、今回のようなケースでは改善までに時間がかかることが多いと思います。
身体を壊していくのは、ただ単に転んだとか使い過ぎただけではなくて、環境がいつの間にか身体に負担を掛けているなんていうのまであるわけです。なるべく高い視点から物事を見ていかないといけないな、という教訓にもなりました。
まとめ
リモートワークから発生した腰痛ということで、一通りの施術を提供し、いったんはちゃんと結果を出せていました。が、その大元の原因として無意識領域に埋め込まれた「姿勢を正せ」が取り残されたままになっていたので、すぐに再発が起きました。
もちろん、トラブルになった身体を修正していくことは大切なことだし、一般的にはそれがメインになると思います。が、もう一歩踏み込んで、どうしてそういうことになっちゃっていたのかまで問い詰めていけば、実は身体への施術なんて要らないってことにもなった可能性があります。
最初からそういう視点で身体をみていくのはあまり現実的ではありません。が、いくつかのステップを踏んででもそこまではみていきたいと思います。それが、自分の施術技術の向上につながり、患者さんへの質の高い施術提供につながっていくことでしょう。
まだまだ勉強ですね…。